みつめてナイト周辺を振り返る


※以下の考察には特定の個人、企業に対する推測を含みます。
 そのため、(十分注意はしているつもりですが)、これまでの考察文以上に色々な方にご迷惑をおかけするかも知れません。
 予めお詫びさせていただくと同時に、問題点をご指摘いただければ即座に対応させていただきますので、ご連絡お願い致します。


●みつめてナイトについて

みつめてナイトはレッド・カンパニー(現レッド・エンタテインメント)と
コナミ・コンピュータ・エンターテイメント東京(KCET)のコラボレーションにより、
1998年3月19日発売された恋愛シミュレーション(公式には純愛シミュレーション)です。

みつめてナイトは(勿論私も含めてですが)根強いファンが多く、
「たのみこむ」ではPlayStation対応ソフトの続編希望の15位(2010年4月現在)と高順位にランクインしています。
しかし、12年経った現在に至るまで、続編は作られていません。
(「みつめてナイトR〜大冒険編〜」は、無印のキャラデザインを流用した全く別のゲームと言っても良い作品です。)

この理由としてよく言われているのは、売り上げが非常に悪かったため大きな赤字を出してしまい、
両社の契約にあった残り2本のコラボ企画(R+聖少女艦隊バージンフリート)の売り上げが更にこれを下回り、
手切れも非常に悪いものだったため、両社が喧嘩別れ状態にあるという感じのものです。
情報ソースを確認しようもないですし、社員の方に聞く訳にもいきませんので、全ては闇の中ですが…。

そもそもコラボ作品は権利が複雑に絡む関係で制約が多く、
続編が作られなかったり、ゲームアーカイブ化の候補から外される事は多いのではと思うのですが、
上の噂を含め、「みつめてナイト」と言うゲームの周辺状況について様々な角度から再検証してみたいと思います。

●みつめてナイトが売れなかったのは本当か?

正確な数字を出すのは難しいのですが、ファミ通調べで約8万本となっています。
ギャルゲーの売り上げランキングの情報ソースはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/Nota/20080714/1216038606
http://dakuryu.at.webry.info/200807/article_7.html
売り上げはどこの調査かによっても大きく異なり、(Wikipediaではみつめてナイトの売り上げが倍の16万本となっていたり…)
単純比較は難しいのですが、ファミ通調べ準拠で統一されていれば一定の信頼性は保てるはずです。

このランキングを見る限り、ギャルゲーで8万本は立派な数字です。
(というか、8万本で売れていないと言っていたら、これより売り上げの少ないゲームに失礼でしょう。)
マリオやDQ・FFなどとは比べるべくもないかも知れませんが、元々ギャルゲーと言うジャンル自体、市場規模がさほど大きくないのです。
しかし、企業側にとっての売れた・売れないと言うのは期待値(あるいは出荷数)に対し、どれだけ売れたかと言う問題であり、
そういう意味では在庫がだぶつき、値崩れを起こしたみつめてナイトは「売れなかった」と言う事になるのです。※1

この売り上げランキングからは色々と面白い情報が読み取れるので、もう少し見ていきましょう。

まず、このランキングにごく最近になってヒット作が出てくるようになったので、これらを加えてみます。
(ソース:http://dakuryu.at.webry.info/201001/article_2.html)
更にシリーズ化された作品は全て載せると傾向が見え辛くなるので一項目に纏め、一番売り上げが多かった作品を代表値として採用する事にします。※2
また、(上記サイトの趣旨とは真逆ですが)、パソコンのR18版からR18部分除去(移植)のゲームを除外します。
そして上のランキングでは除外されてますが、同じくアーケードの脱衣麻雀系からの移植も除外し、纏めたのが次の表です。
ギャルゲー・コンシューマ売り上げランキング
ここで、ジャンルで1、2位、ソースの10位以前を独占と、ときめきメモリアルとサクラ大戦の2作品がいかに突出していたかが分かるかと思います。
(翻ると、みつめてナイトに対する当時の両社の期待の高さも透けて見えるのですが…)
また、「dancing blade かってに桃天使!」や、「あいたくて… 〜your smiles in my heart〜」といった他のコナミ謹製ゲームが軒並みランキング外であり、
虎の子の「ときメモドラマシリーズ」ですら下位に甘んじている事を考えると、みつめてナイトだけが特別売れなかったと言うのは語弊があるのです。
(意外に思われるかもしれませんが、コナミ謹製は実はこれらと最近出た「ラブプラス」だけです。)※3

●製作集団レッド・カンパニーとみつめてナイト

レッド・カンパニーは元々、TVアニメ「魔神英雄伝ワタル」シリーズ、ゲームでは「天外魔境」シリーズで有名になったコンテンツ制作会社です。
レッドは(恐らく)コンテンツ自体を製作する部署は持たず、コナミやハドソン、セガといった製作会社に自社製作の企画を売り込み、
そのロイヤリティーによって利益を上げるタイプの会社だと思われます。 (天外魔境=ハドソン、サクラ大戦=セガなど)
要するに、コナミとのコラボというのは、レッド・カンパニーという会社にとっては全く特殊な事例ではないのです。

ちなみにみつめてナイトはときめきメモリアルのコナミとサクラ大戦のレッドのコラボと言う事で話題になりましたが、
企画スタートがサクラ大戦発売の半年前、製作開始はサクラの発売前後であり、実はサクラ大戦の成功を受けて企画されたものではではありません。
むしろ、共にレッドから各社に向けて様々な企画を出した結果、無事製品化された作品群=姉妹作(親戚?)とも言えるかも知れません。

●大企業コナミとみつめてナイト

私は98年当時のコナミの企業規模というのは良く知りませんが、昔から大企業体質だったという印象があります。
製作現場はともかく、経営陣の方々は他のゲーム製作企業以上にビジネスとして臨んでおられるような…。
例えば経営に携わっているのがゲームとは縁も所縁もない方々であれば、個別のゲームの知識がなくて当然…という感じでしょうか。
そのためか、本社と熱心なファン(ときめきメモリアルやツインビーなど?)との間には微妙な温度差があったのではないかと思います。

そして当然というか、みつめてナイトもその例外ではなかったでしょう。
サクラ大戦のREDとのコラボという事であれば、売り上げと言う意味でそれなりの期待があって当然ではなかったでしょうか。

●過大な期待と過小な待遇

では、このような大きな期待の中で、当時の開発陣が置かれていた状況と言うのを少ない情報から拾ってみます。
みつめてナイトは、売り上げ面での期待値は大きかった(故に出荷数が多かった)と思います。
ただ、万全の製作体勢で臨まれたプロジェクトだっただったかというと大いに疑問が残ります。
例えば、某サイトの記述によれば、発売直後のゲームショーでの展示にも拘らず、デモ機が一台だけというおざなり展示だったとあります。
(加えて社内の冷や飯食いグループの開発だったのではという推測も…)

みつめてナイトはときメモVer.1.5という俗称もあるように、ときめきメモリアル1〜2の間にリリースされました。
コナミにとって本命となる「ときめきメモリアル」シリーズは、続編の発売が望まれながら開発の難航により大きな空白期間がありました。※4
ただ、この期間のリリースと言う事はつまり、ときめきメモリアル2プロジェクトの真最中だったという事も意味しており、
ときメモ1スタッフを含めた主力開発メンバーはときメモ2にかかりっきりだったはずなのです。※5
その結果、みつめてナイトの方は経験の少ない若手開発陣が担当…という事になってもおかしくない訳です。
(実際、ときメモスタッフ(恋愛SLG開発経験者)は音楽担当の村井聖夜氏ただ一人しかいません。)

そしてREDの方はと言うと、実はこちらも状況はほぼ同じだったと思われます。
この時期はREDの主力製品であるサクラ大戦の続編「サクラ大戦2〜君、死にたもう事なかれ〜」の製作が同時進行中でした。
(2の発売は同年翌月の98年4月4日。 1週間後にときメモドラマ2をぶつけたコナミを問題視するなら、REDの方も充分問題です。)
つまりこちらもコナミ同様、ベテランメンバーを割く余裕が無かったのではないか?という疑惑が生まれる訳です。

…つまり、両社の利害関係が、空白地帯を生み出したという事だったのかも知れません。

●「若いゲーム製作者の熱量にご期待ください!」

このコメントは、ファミ通の新作速報にあった広井王子社長(当時)のものなのですが、
(理由の真相はともかく)、みつめてナイトはコナミ、RED両社の過大な期待に対し、両社の若手を結集したプロジェクトとなったようです。

ただ、これが悪かったのかというと、一概にそうとも言えません。
…と言うのも、広井氏の言う「若手の熱量」が、ベテランには作れない作品を生んだという側面があるからです。

例えば、みつめてナイトで最も評価されているシナリオ面ですが、※6
脚本の田村純一氏は当時実績の少ないライターであり(?)、大きなプロジェクトを任されると言うのは稀な事だったと思います。
みつめてナイトの脚本に関しては上の広井氏のコメントにあるように、田村氏に完全に一任していたようであり、
その根拠の一つとしては、みつめてナイト(及びR)からは(勿論洋物の空想世界が題材と言うのもあるのですが)
いわゆる「REDっぽさ」が感じられないという事などが挙げられます。※7

また、短期間の開発にも拘らず、最初に公表した発売日通りに完璧に仕上げました。
これは"熱血リーダー"こと、高野泰氏の力量によるものでしょう。
ときメモ1から登場人物、グラフィック、台詞等を大幅に増量しながら、CD-ROM1枚に収めた手腕もお見事だったと思います。
(参考:ときメモ1=1枚、2=5枚、3=1枚(PS2:DVD-ROM)、あいたくて…=4枚、桃天使1&2=3枚/2枚(DC版:GD-ROM))

名曲を数多く作曲された村井聖夜氏は、ポップン・ミュージックのサイト内でみつめてナイトに対する思いを熱く語っておられ、
当時のスタッフの「熱量」を十二分に感じ取る事が出来ます。

●変なタイトル&変な広告の謎?

以下、タイトルについての話題を雑誌記事などから拾ってみました。

みつめてナイトのナイトって…?
◆女の子をみつめてないとの意味
◆騎士-KNIGHTの意味
◆夜-NIGHTの意味?
この3つの意味が混じっています!?
(本当かよ、おい!)
(コナミマガジン・みつめてCLUB・Vol.1より)

「この開発で、「みつナイ」のタイトルが決まった時の衝撃は今でも忘れられません(笑)。」
(コナミマガジン・みつめてCLUB・Vol.2 おかっち(仮名)と言う方のコメント)

――タイトルの由来をお聞かせ下さい。
田村「発案者のコンセプトが"聞いてて恥ずかしいタイトル"と言う事らしいです(笑)。
女の子が"私の事をみつめていてね"とか"みつめていないとダメよ"と言う気持ちに、
騎士をかけたという言葉遊びに近いですね(笑)」
(ガールズフリーク誌インタビュー)

開発スタッフもタイトルが変だと言う事は重々承知していらしたようです…。(笑)
この緩〜いタイトルが採用され(てしまっ)た理由もそうですが、本編外でのキャラの扱いも謎とされています。

例えば、雑誌の新作速報の記事ではソフィア、ハンナ、レズリー、ピコとヴォルフガリオのイラストのみ。(ファミ通、G'sエンジンの記事)
その後の新作記事でもまず学生組の紹介、かなり後にそれ以外のヒロインの紹介となっています。
並行開発だったとされるRでは、刻の涙継承者=ヒロイン候補の5人が全員学生組であり※8、
キャラクター&ワールドガイドでも最初に掲載、紙面を大きく取っているのは学生組の6人、
スクリーンセイバーで除外されているのはプリシラ、セーラ、アン、ノエルといずれも学生組を除くヒロインであり、いずれも学生組の扱いが非常に良くなっています。

反面、本編の方はというと、学生組で必須イベントが充実しているのはソフィアとライズだけ。
ロリィ、ハンナ、レズリー、リンダはむしろイベントが少ない方であり、攻略条件やEDもあっさりしています。 (リンダのみ一応必須イベントあり)
イベントやEDが特殊になっているのはプリシラ、セーラ、テディー、クレア、アン、ノエルなど学生組以外の方が多くなっており、
そんな理由もあってか、学生組かどうかは人気と殆ど関係ないため、本編外での扱いの落差が謎の一つと言われています。

…では、何故こんな乖離が生まれたのでしょうか?

レッド・カンパニーはメディアミックス戦略が得意な会社だと思います。
メディアミックスというと、各メディアでキャラ、世界観が厳密に統一されていない(縛りが緩い)というのは非常に良くある話です。※9

そこで、最初に縛りの緩い企画案(メディアミックス)があり、本編(可能性世界の一つ)の内容を詰めた結果、企画当初とずれが生じたのではと考えてみました。
学生組の件はREDがコナミに企画を持ち込んだ当初、ときメモ=学生を強く意識していたため…と言うのは充分ありえる話です。※10

最初は例えば、西洋風世界でプレイボーイ騎士(非傭兵)が学園に通う女の子と恋愛するお話(戦いもあるよ)と言った感じの世界観だったんじゃないかと。
(双葉社攻略本の相関図の東洋人の人影のイラストがもしかしてその名残?)
もし最初に上のような緩い企画案があり、各社(KCE東京・KCE新宿…etc.)で思うように料理して下さいという話だったなら、
無印とRのような乖離が生まれるのも無理の無い話です。
また、ポップンミュージック15のサイトの村井聖夜氏のコメントには、次のような一文があります。

表向き(ゲーム的)にはストーリーの中に登場してくる、いろんな女のコと仲良くなってオモシロおかしく暮らそう〜♪という、
典型的恋愛シミュレーションゲームなのだけれど、裏向き(物語的)には、東洋より身ひとつでやってきた男が、
傭兵としてとある西洋の小王国に仕え、周辺国との緊張感の中で武功を挙げ、
最終的には「聖騎士」という戦士としての最高勲位に昇りつめるのが目的。
つまり、途中で現れてくる女のコたちは、すべて甘い罠。
恋にウツツを抜かしていると、硬派な聖騎士にはなれないどころか、最悪は国家自体も危機に陥っていく恐れがあるという、
「人生におけるジレンマ」が主たるテーマなのです。

営業的にはもちろん、「恋愛」の部分を強調した売り方にしたかったのでしょうが、
制作者サイドは逆にこの「聖騎士」になるという目的にこだわっていました。
このゲームは女のコ達とチャラチャラするのが目的じゃない、危機状態にある小国で成功する事が男のロマンだと。
だから、この「本当のエンディング」という演出にもこだわりを持っていました。

つまり、「表向きの世界観」が上からの縛りだったが、開発者の間ではむしろ「裏向きの世界観」がメインという認識だったと。
仮にシナリオライターの方が上から最低限の縛りを守れば好きに料理して良いよと言われたとして、
その結果が「戦記ものをやってみたかった」であったとしても別段不思議ではないでしょう。※11

一方、Rの方も大枠(キャラ表+無印ED一覧など)を渡された後、レッドや本社からの指示が殆ど無かったと仮定して考えると、
無印のシナリオと同じものをやる訳にもいかないし、(上からプリントステーションを入れろという指示が来るなど)何でもありみたいなので完全オリジナルに、※12
あっちではダークな世界観が好評だったようなので、こっちもダーク路線で、(注:やりすぎ)
この際、趣味に偏ったバカ(パロ)ゲー・鬱ゲーにしてしまえ、
最後に一応続編としての最低限(?)の体裁は繕ったけど、基本的に別作品なので無印と違うと言われても困る…などという感じで説明がつきます。※13

ゲーム制作以外の他の部署も同様に、
あるラジオ局では「前から考えていた、ゲームの登場人物をパーソナリティーにする企画」を試してみたくなったかもしれませんし、
テレビCMの製作現場では、「前代未聞のローマ・スペイン広場貸し切りのロケ」をやってみたくなったかも知れません。
あるいは「渋谷駅周辺にインパクト抜群の巨大な目だけのポスターを張りまくろう!」だったかも知れません。※14

もしかして、コナミとレッドの主導権が曖昧にされた結果、現場が混乱していたのでしょうか?
…だとすると、みつめてナイトは一つ間違えば駄作になる可能性が極めて高い状況の中で生まれた作品だったと言えるのかも知れません。※15

●ときめきメモリアルを超えられなかった理由

本作はポストときメモという期待感がありながら、売り上げではときメモに遠く及びませんでした。

その理由としてまず挙げられるのは、発表時にほぼオンリーワンだったときメモに対し、みつめてナイトは既に競合作多数の苦境だったと言うのがあります。※16
ポストときメモを望んでいた購買層は、R18移植(当然粗悪なものもあった)や、ブームに乗っただけの粗悪作品によって食傷気味だったという事もあったでしょう。

また、コナミの宣伝のちぐはぐさによる認知度(宣伝効率)の低さというのもあったと思います。
(本編の内容に対し緩すぎるタイトルが足を引っ張ったと言うのもありますが…)
ただ、それを言うなら初代ときメモの方はCMや雑誌広告さえありませんでした。
ときメモの認知度を上げたのはネットによる草の根運動、及び、一部雑誌による特集記事です。

みつめてナイトの場合、草の根運動については決して引けを取らなかったと思います。
ただ、口コミとは知り合いに貸したり、借りたり、話題にしたりなどで少しずつ広まっていくものであり、
コナミからすれば即座に火がついて欲しいと考えたかも知れませんが、(ときメモとサクラのネームバリューもあるし当然?)
普及にはそこそこ時間がかかったと思うのです。

しかし、内容が本編と似ても似つかない続編(?)Rの発売、その後の潮の引くような関連商品制作からの撤退、公式HPの早期閉鎖などにより、
発売から9ヶ月(98年11月)の時点で早くもシリーズ化に止めを刺される(?)形となりました。
結果、一部の熱心なファンを除いて「終わった作品」として認知される事となり、これが後の草の根運動における大きな障害となりました。
…実際、展望の見えない作品に情熱を注ぎ続けるのは難しいのです。
(それでも続編要望の署名をDolphanStation様などが中心となって活動、提出されましたが、今だ続編の製作決定には至っていません。)

コナミがみつめてナイトを切った理由ですが、つまりは本社の期待を受けて制作されたものの、それに沿う事が出来なかったという事なのでしょう。
上の分析からすると全く売れなかった訳ではないのですが、本社が期待する売り上げに届かなかった事が全てだったのかも知れません。
その結果、それ以外の諸事情も勘案した上で切る決断をしたという訳です。
(諸事情にはREDと本当に仲が悪かったというのも含まれるのかも知れませんが…)

雑誌展開については、G'sマガジンの裏話掲載号が私の手元にあるのですが、ざっと見てみると、この時点で既に火が消えかかっています。
人気投票で高順位を取り、紙面を大きく取るのはR18作品からの移植作品が主であり、みつめてナイトはファンイラストが時々散見出来るのみという状況です。
(ちなみにときめきメモリアルは健在であり、2Pのファンページと、巻末近くにもキャラの特集コーナーがあります。)

作品自体の優劣については発売年度、前発・後発、世界観の違いなど、考慮事項が多すぎて単純比較は不可能(というか禁忌)ですが、
みつめてナイトの方がマニア志向が強く、一般向きではなかった、とは言えるでしょう。
ただ、某動画サイトでアンのエンディングの再生数がランキングの上位に来るなど、ニーズが無かった訳ではないと思います。

初代ときメモは最初は本社からの期待は全くありませんでしたが、本社の与り知らぬ所でユーザー側の盛り上がりによってヒット作となりました。
全く0からのスタートであり、草の根運動が育つ素地がありました。 続編発表はファンにとってはある意味願ってもないものだったかも知れません。
対して、みつめてナイトはスタート時から過大なノルマを背負っており、(NTT出版の攻略本にありますが)続編の制作も視野に入れられていました。
しかし、本社の期待に届かず(これはマーケティング不足の営業部の責任とも言えますが)たった数ヶ月で公式による終了宣言、続編も白紙に戻った…という訳です。
両者の間で決定的と言えるのは、実はこの差だったのではないでしょうか?

余談ですが、興味深い記事を紹介しておきます。
http://homepage3.nifty.com/~shinobu/DeW/DeW-011.html
初代ときめきメモリアルは売り上げを期待され、満を持して生まれた作品では全くありません。
PCエンジンという当時でも寿命を終えようとしていたハードへの駆け込み開発であり、
そういう作品は上からの縛りが弱く、比較的開発者のやりたい事が出来たようなのです。
(マイナーゲームですが、「てきぱきワーキンラブ」(PCE)と言うソフトのインタビューにも似たような話がありました)
この辺り、周辺事情がある意味180度違うはずなのに、何故かやけにみつめてナイトに似ている気がしませんか?※17

以降、ときめきメモリアルは、口コミで予想外に売れてしまった…が故に、本社でも無下に扱えなくなったので、
移植版や続編製作、グッズ販売などのキャンペーンを急遽立ち上げたものの、
本社の方で作品の内容や魅力などを的確に把握している訳ではなかったので、ファンとの間に温度差が生まれてしまったという訳です。

コナミはNo.1、オンリーワン企業として、恋愛SLG(ギャルゲーでも可)というジャンルを牽引するべきだったと思うのですが、
みつめてナイトという良作に早々に見切りをつける反面、ときメモブランドを長く引っ張りすぎた事がR18移植乱造等による食傷ムードにも繋がり、
ジャンル全体の衰退の遠因になったという側面はなかったでしょうか?

●続編を考える上で、コラボとはまた別の問題

12年も経てば不都合が出るのも当然ともいえるのですが、コラボ問題以外にも色々とハードルがあります。

まず、シナリオの田村氏は2004年発売の「サクラ大戦物語〜ミステリアス巴里〜」の脚本を最後に足跡が途絶えています。
(仮に続編が出たとして、田村脚本でなければ意味がないのですが…。)
コナミの高野泰氏もネット検索にかかりません。
他のオリジナルスタッフもどれだけ残っているかと言うと、恐らくかなり厳しい状況でしょう。(竹浪氏や村井氏などは大丈夫そうですが…)

声優さんは元々有名な方ばかりであり、現在も活躍中という方が多いのですが、
2000年にはジーン・スパン役の新山志保さんが、
2003年にはグスタフ役の嶋俊介さんが、
2010年にはデュノス・デュラン役・CDドラマナレーターの郷里大輔さんが亡くなられています。
また、2000年にソフィア役の小西寛子さんが声優業から退かれています。
(その後ギルティギアシリーズのブリジットの声を一時担当されましたが、現在は他の方に代わっています。)

●結局、続編希望は現実的な話なのか?

以上の考察から明らかかも知れませんが、正直かなり難しい…と言うのが私個人の本音です。
ときめきメモリアルの新作が先日、8年ぶりに発売されるという事例もありましたが、単純にそれと比較するのも楽観論が過ぎるでしょう。

ただ、現実的に難しいというのはある程度の事情を知っている人であれば百も承知の事だと思います。
(だからこそ続編希望のランキングが多少高くても実現しない(そもそも続編希望の上位は訳ありが多い)のです。)
うちのサイトがムーブメントの起爆剤になるなどと言う大それた事も全く考えておりません。

…しかし、ゲームアーカイブス化でもされれば新規層を取り込め、何か起こるかも知れませんし、希望は捨てずに行きましょう。
夢を繋げていけば、明日が見えるはずなのですから…。

そんな訳で、もし興味があれば、"たのみこむ"の方にも是非ご参加下さい。

追記:続編は絶望的とも言われていた魔装機神 LORD OF ELEMENTAL、タクティクス・オウガが携帯機でリメイクされました。
   エストポリスというゲームも続編はかなり難しいと言われていたそうですが、リメイクされたようです。
   リメイクブームのようですので、もしかしたら…と思うのですが、何かアクションを起こしておくべきかも知れませんね。

(2010/04/27加筆 司書)


注釈

※1 ただ、その理屈だと大量の在庫で値崩れした初代ファイアーエムブレムなども同様に売れなかった事になります。
   それを考えると、みつめてナイトの続編というのは全く現実味のない話でもない気がするのですが……。
   コナミさん、REDさんの関係者の方が万が一見てらしたら、検討をお願いしたいです。

※2 こうする理由はシリーズで総計を取った場合、シリーズ化されたものが明らかに有利(同じユーザーが2重3重に購入するため)だからですが、
   代表値方式を取った場合も、シリーズ化・複数プラットフォームで発売された作品についてはいくつか考慮事項があり、そう単純でもありません。
   ・代表値方式でも、続編が出る度に前作の売り上げが大きく伸びる傾向があるので、やはりシリーズ化された作品が有利です。
   ・複数プラットフォーム(PS&SSなど)で発売された作品は、総計だと単独で出た作品より有利(両方購入するヘビーユーザーのため)であり、
    代表値だと(もう一方に売り上げが分散されるため)不利です。
    例えば、悠久幻想曲などは総計するとみつめてナイトより上位になります。 (但し、特にこのシリーズには特殊事情あり)

※3 コナミ企画メディアミックス作品の「極上生徒会」のゲーム版には恋愛要素があり、携帯アプリ限定ですが「スカイガールズ」にもあるそうです。
   漫画原作ありだと「最終兵器彼女」、「ラブひな」、「魔法先生ネギま!」、「まほろまてぃっく」、「ハヤテのごとく!」などのゲーム版に恋愛要素があり、
   「ツインビーRPG」も好感度によるマルチエンディング方式となっています。(但しシナモン博士やワルモン博士とのEDもあり(何故この二人…?))
   女性向けでは「ときメモGirl'sSide」シリーズ以外に「耽美夢想マイネリーベ」シリーズが出ており、
   漫画原作のゲーム化だと「テニスの王子様」、「ヒカルの碁」、「NANA」、「しゅごキャラ!」などにも恋愛要素があるようです。
   以上、Wikipediaで確認出来たものだけですので、見落としはまだまだあると思いますが。

※4 ときメモ2発売は初代からは5年後、PS版からは4年後です 一部では販売戦略では?と言う推測もあった位でした。
   みつめてナイトはこの空白期間に(たまたま?)リリースされたのですが、本作をときメモシリーズに数えるべきかという話はともかく、
   ユーザー視点だと、ときメモシリーズの新展開(洋風ときメモ)という認識は間違いなくあったと思います。
   一方、コナミが当時ポストときメモの本命と考えていたのはむしろ「あいたくて…」(97年に先行体験版発売)の方だったと思われますが、
   開発が難航するときメモ2の前に発売する予定が、こちらも発売の延期に次ぐ延期により、2000年発売と大幅にずれ込む結果になり、
   結局みつめてナイトと競合する事はありませんでした。 (無事発売された事を知らない(あるいは現物を見た事が無い)人も多いようです)

※5 みつめてナイトの製作発表は'97年2月27日、ときメモ2はその約1ヵ月後の'97年4月4日と完璧に被っています。
   (実際の発売日はみつめてナイトが'98年3月19日、ときメモ2はその1年半後の'99年11月25日)
   ときメモキャラを使ったクイズゲーム「ときめきの放課後 ねっ☆クイズしよ」の発売が'98年7月16日。
   更に上記の「あいたくて…」企画('97年11月27日先行体験版発売〜2000年3月16日本編発売)も同時進行だったと思われます。
   開発力的にはあまり影響ないと思われますが、DancingBladeかってに桃天使!も'98年8月27日発売であり、この時期に異様に開発が集中しています。
   (「みつめてR」(KCE新宿)、「彩のラブソング」(KCEJ)、「Win版ときメモ」&「青山ラブストーリーズ(開発中止)」(KCG青山)の開発も並行してました。)

※6 高野氏、村井氏などの開発陣も、異例と思えるほどプッシュしています。
   田村氏のシナリオが開発陣から高い評価を受けると言う現象は、実は「熱血大陸バーニングヒーローズ」の時代からありました。(匿名希望様より)

※7 レッド作品は広井王子社長(当時)の強烈な個性が前面に出ている作風のものが過去(少なくとも98年当時)には多かったように思います。
   具体的にいうと、前近代的日本の世界観(和風ファンタジー?)が特徴であり、ある種の「胡散臭さ」が売りとでもいうべきでしょうか?
   例えば天外魔境なんかはもろにそうですし、ワタル、サクラ大戦、萌えよ剣、バージンフリート、火魅子伝、リュウケンドーにも似た雰囲気があります。
   この理由は、ご本人がインタビューで語られていたと思った(うろ覚え)のですが、
   日本人が外国にも通用する作品を作るには、純日本的な作品を作っていかなければならない…と言うような事だったと思います。
   (Rの方はまた事情が異なり、恐らくRED側はほぼノータッチであり、実質KCE新宿の単独開発だったためと思われます。)

※8 企画段階ではジーン、メネシス、プリシラ、テディー+もう一名(多分ロリィ)がいたそうですが、記憶容量の問題で没になっています。
   (御者服(ジーン)、魔法のローブ(メネシス)、治療に良い服B(テディー)はその名残と思われます。)
   また、Rではアン、プリシラ、クレアと言った無印における学生外人気キャラの扱いが特に酷いと言われています。

※9 サクラ大戦本編とアニメ版、舞台は別物と考えた方が良いですし、火魅子伝の原作ファンの方はゲーム版は無かったもの扱いだそうです。
   ちなみにみつめてナイトの場合だと、ドラマCDではライズ入国以降がパラレルストーリーですが、世界観は統一されていると思います。
   ラジオの方もやはりパラレルストーリー(ソフィアの婚約者設定なし、東洋人に振られ、一人でオーディションを受けてテロに巻き込まれる)で、
   ソフィアの性格はゲーム版より更に内向的な感じとなっていますが、それほど大きな乖離はないと思います。
   …そういえば、ドラマCDの1巻の広井氏のコメントでは、もっと大きなメディアミックスをやりたい(かった)と書かれてましたね…。
   参考:Wikipedia:メディアミックス/原作作品との乖離

※10 剣と魔法のときメモと言えば、もろにブルーブレイカー(管理人は未プレイ)ですが…。 そういえば、RPGのRは特に似ているのかも…?

※11 もし、特殊な事情による縛りの緩い若手プロジェクトに大きな予算と言うレアケース(?)がなければ、
    みつめてナイトのような(大いに趣味の偏った)大作は生まれて来なかったかも(そして今後も生まれてこないのかも)知れません。
    あとがきで、ある意味非常に贅沢な作品と書いたのは上のような推測があったからでした。

※12 上からの指示の件は攻略本に、プリステを入れる指示が来てるくらいだから自由にやって良いと判断したと言うような記述があります。
    この時期のコナミはなぜか色んなゲームにプリステ風のミニゲームを入れまくっています。 意図は不明…。
    例:ツインビーRPG ときメモドラマ3旅立ちの詩 ときメモ〜おしえてYour heart〜など

※13 無印発売直後のRの広告(コナミマガジン)ではシナリオなど何も決まっていない感が漂っています。
    後でREDスタッフが合流する手はずだったんでしょうか?
    以下はR製作スタッフ(プロデューサー)の方のコメントです。

    ――前作と比べると、性格や世界観が違うところもありますが。
    下村:いや、違うゲームですから(笑)。みつめてナイト「R」ですから。
    スケジュール的に前作のほうと同時進行だったので、こっちでシナリオ書いちゃったけど、
    前作のほうで性格変わっちゃった、とかありまして、それでどうしてもくい違う部分が出ちゃったんです。

    (新紀元社 みつめてナイトR〜大冒険編〜パーフェクトガイド 開発者インタビューより)

※14 これらは別次元で評価を受けた、あるいは歴史に名を残した事は間違いないものの、
    作品内容をユーザーに正しく伝え、売り上げに貢献したのかと言うと少々疑問が残ります。

※15 最後に出たバージンフリートはスタッフロール確認出来ていませんが、
    少しプレイした感じでは非常にREDらしい世界観(ヒロインのセレクトも非常に広井氏好みっぽい姉御肌が多い)に仕上がっており、これも謎です。
    ちなみにバージンフリートはシステム面は酷評されていますが(一言で言うとポリゴン過渡期の悲劇)、やり込めば面白そうな雰囲気はあります。
    ただ、タイトルから明らかかも知れませんが、完全なバカゲーとなっています。 (しかもRよりツッコミ所が難しいプロ仕様…(笑))

※16 センチ炸裂が約2ヶ月前、同時期(98年3月)発売は「ずっといっしょ」「ひざの上の同居人」「ファイアーウーマン纏組」「悠久幻想曲2nd Album」
    「続・初恋物語」「ときメモドラマ2〜彩のラブソング〜」「卒業V〜Wedding Bell〜」など終焉期の作品群であり、(ときメモ2よりましとはいえ)既に旬を逃しています。

※17 実情はスタッフ総入れ替えであったときメモ2よりも(サウンドのメタルユーキ氏がプロデュース=1のスタッフが殆ど残っていなかったためと言うのは有名な話)、
    異端児(継子)として生まれた本作の方が、かえってときメモ1のDNAを強く受け継いでいたと言えるのかも知れません。


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