みつめてナイトR 〜大冒険編〜 個人的な感想

Rは奇数周のライセンスあり・なし、偶数周の3周で一応完結します。
それで、3周目を終えてみた感想なのですが…、一言で言うと、酷い話でした。

いや、クソゲーだとか、そういう話ではありません。
登場キャラの扱いが、投げっぱなしで酷すぎるということです。
順を追って説明していきます…。

その1. 主人公クリストファー・マクラウドの境遇が酷い

彼の過去も確かに酷いのですが、それ以上に時間という監獄に囚われており、
そこから脱出する手段が一切示されていないというのが問題です。

参考:クリストファー・マクラウド(コナー・ウォレス)、地獄の無限ループ

これの無限ループです。
奇数周のライセンスなしルートで復讐以外の生き方を見つけても、ライセンスありルートで復讐を果たしても、
偶数周で"何度も転生して復讐が無意味だと悟った"としてもこの無限ループから逃れる術はありません。
ループを繰り返す度に太陽の衝突の犠牲になり、拷問され、妹を殺されて血の涙を流し、復讐の為に多くの人間を裏切り、利用し、殺し、
場合によってはヒロインや師匠、ジーンを斬殺して復讐を遂げる訳です。  (そしてその復讐も僅か数年(?)でリセットされます)

表を良く見てみると、この無限ループの原因はパコのかけた魔法だと分かります。
(偶数周の時間移動は、同行ヒロインをマザーウェルに置き去りにしない限り(しても?)避けられません)
ダークプリンスの言葉が真実なら、「オルカディアが滅ばぬ限り」、彼は甦るのですが、
奇数周の復讐ルートだと滅ぼすことが出来るので、結果から言うと、その後の刻の魔法発動は完全に蛇足(薮蛇)です。
しかし、クリスは時間を遡る度に記憶を全て失ってしまうため、パコに魔法をかけさせないと言う選択肢を選ぶ事が出来ません。
つまり、これが無限ループの最大の原因になっています。

ただ、彼(マクラウド)は、記憶を失っても毎回違う行動を選択出来るという、ある種の超人であり、
また、特別執着のあるもの(真っ先に衣装ですが)を持ち越せるという特殊能力も持っています。
なので、全く希望がないというわけではないのかも知れません。
いずれにしろ、公式のフォロー(例えば衣装を全部集めたらライズの水着が見れる!じゃなくて、ループを抜ける真ルートが選べるようになるとか)が
全くないというのは大きな問題ですが……。

また、復讐ルートでなければオルカディアを滅ぼせない事になっていますが、直接滅ぼさなくてもオルカディアは長くはない気がするんですよね。
斬帝剣がいくら強いといっても、科学の最先端が高速船のオルカディアと、戦闘機のダイでは戦力に差がありすぎますし、
その前に、ダイを苦戦させているアンダビを落とす事すら難しいかも知れません。
また、「いくらでも替えがきく」とはいえ、プリシラしか後継者がおらず、プリシラ本人も自分が正統後継者ではないと気づいている様子です。
神祇官の粛清のやりすぎで政治体制も万全ではない上、強引な拡張政策のため内部からの反発も強いとか、ほぼ末期的な気がするんですが…。

極端な話、ダークプリンスのやりたいようにやらせてみるのもありなんじゃないかと。 (どうせオルカディアが滅べば消えますし)
クリスはダークプリンスの理屈は分かるけど、やり方が強引すぎるから駄目だとか批判してましたが、
オルカディア権力闘争の件は百歩譲って目を瞑るとしても、先を急ぐからとドリフの森の密猟者を問答無用で斬殺したりしてますし、
あんまり人の事を言えないんじゃないかと思ったりもしました。

その2. ヒロインの扱いが酷い

ここでいうヒロインとは、パコを除く、無印から出演の16人と2人の妹の事です。
以前にも書きましたが、刻の涙継承者5人以外の無印から出演の11人は、本作では殆どがチョイ役しかありません。
更に、その数少ない台詞での無印のエンディングのネタばらしや、キャラ崩しも酷いです。
特に無印では1・2を争う人気キャラのアンが、Rでは「前世の因果」とやらで、
イケスで泳いでいる魚に混じって主人公がまいたエサを食べにくるイベントがあると言うのは有名な話です。

その中でもピコ=ノエルだけは別枠なのですが、ピコ=ノエルの場合、もっと酷いです。
ピコはパコのため、妖精界から危険を冒して人間界に来ますが、"勇者"(=クリス)に会うという目的を果たした後、悪魔に存在を察知されて殺されてしまいます。
彼女の記憶を封じたメンタルキューブには、自分も勇者様に憧れていたが、パコが勇者様と結ばれる事を願っているというメッセージが入っていました。
パコの方は、ピコが殺されるだろうと薄々感じながら人間界に送り出したと言う話を暴露します。
そして、ピコの犠牲の上にあるにも拘らず、勇者様と一緒にいられる事に幸せを感じている自分は罪深い女であると続けます。
マザーウェルが崩壊し、過去に飛ばされた後は、記憶が全て飛んでいるとはいえ、パコは"ノエル"の名前を名乗る事になります。

これは……名前だけでも勇者と一緒にいられるから、あるいは姉が幸せになるという願いが叶ったから良かったと捉えるべきなのでしょうか…?

次に、表向きにはメインヒロインにしか見えない刻の涙継承者の5人について見てみます。

一応、彼女たちとのエンディングはありますが、奇数周のライセンスなしルートだと、非常にあっさりした後日談の後、
「何か忘れている気がする」という主人公の独白が続き、パコが窓辺に座っている絵をバックにスタッフロールとなります。
一方、偶数周のエンディングはパコ固定ですが、いかにもというハッピーエンド(トゥルーエンド)の演出になります。

つまり、「奇数周は正しいエンディングではなく、忘れているのはパコのことである」という事を暗示しており、
真のヒロインはパコで、5人のヒロイン=パコの前座と言う図式が成り立ちます。

ゲームエンド(一応ハッピーエンド)後の期間で両者を比べてみると、
パコの場合、太陽の衝突(クリス死亡)までにはかなり間があると思われ、5人もの子供が生まれています。
一方、継承者の5人は刻の魔法発動までの、長くてもせいぜい数年程度だと思うので、比重が高いのは圧倒的に前者です。

5人のヒロインが何故ハッピーエンドにならないのかというと、やはりパコの魔法が原因です。
このためにクリスは永遠に過去に飛ばされ続け、無数の並行世界を未来方向にばら撒きながら、その都度、ヒロインは未来に取り残される訳です。
伝説の一文のように「何度も巡り合う」のはパコだけであり、5人のヒロインはループの前方に戻る手段がないので、ひたすら投げっぱなしです。
(逆の言い方をすると、これがあるからパコはクリスと「何度も巡り会える」訳ですが…)

そして、投げっぱなし以前に、本編での出場すらなく、消えた事(真相)すら知らされないかも知れない二代目メリンダは更に酷い事になっています。
(メリンダが現れたらヒロインと修羅場になるのではという推測もありますが、その心配はありません 近いうちクリスは綺麗に消えますので)
蛇足に近いですが、何も分からないまま拷問された挙句、ショック死した一代目についてはここであえて言うまでもないでしょう…。

プレイヤー視点で考えてみると、このゲームのヒロインは刻の涙継承者の5人という認識が普通だと思います。(少なくともそう見えるはずです)
ゲームをプレイする目的の一つはあくまで彼女達であり、イベントの殆ども彼女たちが関係するものです。
無印からのファンであればなおのこと、5人のヒロインに対する感情移入は強いはずです。
しかし、偶数周のゲーム終盤近く、ヒロインたちがクリスと涙ながらの別れをするイベントの後で、
「実は彼女たちに好意は感じていても、女性として見る事は出来なかった」と主人公が暴露するという衝撃の展開が始まり、(つまり上のイベントも演技)
ゲームが終わりそうな頃に現れた"謎の女"に「私では駄目でしょうか」と「トンビが油揚げをさらう真似(byジョアン)」をされる訳です。
この辺り、製作者が何を意図していたのか気になる所ですが…。
(※念のため、私はパコが嫌いな訳ではありません。)

ちなみに、奇数周エンディング(夢の時間)の歌詞は、取り残された5人のヒロインのものだと思います。(バックにいるのはパコですが)
例えば、
「恋人だから、何も言葉はいらない」
「あの日の朝にあなた私を残して遠い所へと行ってしまった」
「だけど私、ずっとあなたの帰りを待ち続けている」
と続きますが、これは刻の魔法で突然消えてしまった主人公を待ち続けているヒロインを表した歌詞と考えるのが妥当です。
(前述のように、待ち続けても絶対に帰ってきませんよ、という設定になりますが…)
もし興味があれば、エンディング「夢の時間」、及び、オープニング「キミと出会えて」の歌詞をそういう視点で聴き直してみてください。
私は5人のヒロインをイメージした上でこの詩を書くというのは悪趣味すぎる思いましたが…。
(作詞の広井王子氏は、突然主人公に置いていかれてしまったヒロインの歌詞を書いてくださいと言う発注を受けただけのような気もしますが…)
ちなみにパコはクリスの最期を見ているので、この歌詞はあまり当てはまらないと思います。

追記

後である方に指摘されたのですが、無印も確かに酷いと思います。
アンのエンディングは全ての謎を残したまま投げっぱなしでしたし、東洋人が国外追放されてその後のフォローもなく、
裏話のロリィが金品目的ではないストーカーに拉致監禁されて殺されたと暴露した上で、展開を「一度は見てみよう」もあり得ません。

ただ、無印の場合、絶望の中にも希望が若干残されていた(想像の余地と言う意味でも)と思うのです。
Rの場合、その部分まで(想像の余地も残さず)バッサリ切り捨てられていたと言うのが気になった点でした。

また、個人的に無印のキャラを変な方向に改変されたという、ごくささやかですが恨みにも近い感情があったのも事実でした。
この点、Rをお好きな方で、不快に思われた方がおられたら、申し訳ありませんでした。
(※テーマに関しては行き過ぎの部分があったので削除しました)

正直な所、上のような感情がごちゃ混ぜのままプレイし続けたというのもあって、純粋な感想と言うのも難しいのですが、
(特殊なイベント(ミスコンやハイパーオリンピア)でない限り着せ替えは一切させず、制服で最後まで通したり…)
振り返ってみると、無印への悪意があった/なかったという話はともかく、結構楽しんでプレイしていたかなと思います。
ソフィアは別人と思いつつも、インペリアル歌劇団の離脱イベントでは長年の胸のつかえが取れた気がしたのも事実ですし…。

それに無印キャラの扱いに関しては、KCE新宿側の事情もあったんじゃないかとも思い始めています。
簡単に説明すると、無印とRは、そもそも並行開発(あるいは競作)であって、1作目、2作目の関係ではなかったのではと言う推測です。
そしてたまたまRの方が後発になったので、無印の続編と言う体裁を整えなければならなくなったが、ぶっちゃけ無理だった…と。
無印のTVCM、駅広告、ラジオドラマなどの連携のちぐはぐさも併せると、その可能性もあるのかなと考えています。
(あくまで可能性の話ですが、このあたりの推測についてはいつか書く事があるかも知れません。)


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