みつめてナイト外伝〜ライズ・氷解〜
31
ソフィアは私の隣に腰を下ろすと、嬉しそうに私を見ていた。
「なにか楽しい事でもあったのかしら」
「ええ!ライズさんが笑ってくれました」
「それがそんなに楽しいの」
「楽しいって言うか・・・嬉しいんです」
「そう」
「はい!」
ソフィアはニコニコとしている。
彼女の笑顔を見ていると、こちらまで何故か気分が軽くなっていく気がする。
「今日は良い天気ですね」
「そうね」
「こんな日はどこかに行きたいですね」
「・・・」
私は戦場に赴く兵士達の事を思った。
彼らもこんな天気の良い日に戦場に行きたくはなかったのだろうか?
それとも勝ち戦とわかっているので、軽いピクニック気分だろうか。
私がそんな事を考えていると、ソフィアがまた微笑んだ。
「ライズさんって、よく考え事をしていますよね。何を考えていたんですか」
「・・・色々とね。あなたは考え事などないのかしら」
「・・・考えなきゃいけない事はたくさんあります・・・でも、考えても答えの出ない事ばかりだから考えません」
そう言ったソフィアの瞳が一瞬翳った。
「そう。考えても答えの出ない事は確かにたくさんあるわね。でも自分から行動しなくては何も変らないわ」
「自分から行動・・・ですか」
「ええ。もっとも今の状況に満足しているのなら話は別だけれども」
私は自分でもそんな言葉が出てくる事に驚いた。
心の充実が、言動にも出るとは思っても見なかった。
ソフィアは遠い目をしながら、小さくつぶやいた。
「いいえ、満足していません…」
「だったら行動する事ね」
ソフィアは私の方を見て、ためらいがちに言った。
「ライズさんは、今のご自分に満足しているんですか」
「満足…はしていないわ。まだまだやらなければいけない事や、目標が沢山ある。でも、それらを少しずつでも消化していかなければ、絶対に満足には繋がらない」
「そ、そうですよね・・・少しずつでも消化していかないと・・・」
彼女は空を見上げるともう一度力強く頷いた。
そして意を決したように私を見た。
「あ、あの、今日の放課後とか、なにか予定がありますか」
私はスカートのポケットからスケジュール帳を取り出した。
今日は特に何の予定も無い。
もっとも戦争が終わるまでは何の予定もないのだが。
「特にないわ」
ソフィアの顔がパッと明るくなった。
「だったら、あの、一緒に行ってもらいところがあるんですけど・・・あの・・・」
「構わないわ」
「本当ですか!?」
「ええ」
「良かったぁ。じゃあ授業が終わったら下駄箱で待っていますね!」
「そう」
「それじゃ、私もう行きますね!有難うございます!」
「別に礼なんかいらないわ」
彼女は立ち上がると、嬉しそうに一礼して校舎の方へと駆けて行った。
「ふふ、おかしな子」
私は微笑を浮かべながらため息をついた。
少し前の私ならば、こんなことは考えもつかない事だった。
だが、私とおなじ年の普通の女の子が、何に悩み、何処に行こうとするのか興味があった。
私は立ち上がり、軽く体を伸ばし空を見上げた。
バルドーや仲間達が生死を賭けた戦いに身を投じている。
私はこうして命の心配もなく生きている。
だがそれでいいのだと思う。
私には私にしか出来ないことがある。
彼らがいるのは戦場で、私がいるのは戦場ではない。
それでも私にとっての戦場は、ここ以外の何処でもない。
私なりに私の戦いを生きてみる。
それが八騎将としての私の新しい生き方だった。
午後の授業の予鈴が鳴り始めた。
もう教室にもどらなくては。
私はこの戦場をゆっくりと歩き出した。
To be continued
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